
2021年、年明け早々から各自動車メーカーの労働組合による春季労使交渉が始まりました。今季のスズキ労連は、8年ぶりに改善についての統一要求を見送る判断を下しました。しかし、経済事情を考えるとなぜ見送ったのかが気になります。なぜ、賃金改善を見送ったのかを検証していきます。
なぜスズキ労連は統一要求を見送ったのか?

スズキの関連会社に勤める社員から構成されるスズキ関連労働組合連合会(以下、スズキ労連)は、労連で統一した賃金改善を見送る決断をしました。組合員の数は約2万9000人という人数を要する組合です。
組合の人数を考えると、影響力が大きいとおもえるため、なぜ見送ることになったことに疑問に思う人もいるでしょう。しかし、改善要求を見送った理由には、4つ項目が考えられます。
見送った理由①コロナの影響で販売が低迷したから
2020年に入ってから、世界中で爆発的に広がったコロナウィルスは、人々のライフスタイルを大きく変えただけでなく、各国の経済にも大きな影響を及ぼしています。各国の自動車メーカーもその例外に漏れることなく、大きな影響を受け、販売台数が大きく落ち込みました。
スズキも主力販売先の一つであるインドで起こったロックダウンの影響で四輪車の販売が低迷しました。現在は、回復傾向にあるものの前年同様の水準には届いていないため、完全に元に戻ったとはいえません。
見送った理由②深刻な半導体不足
現在の自動車の各機能を維持するために、半導体は欠かせない部品です。しかし、コロナウィルスの影響で、巣ごもり需要と在宅勤務が増加ししました。そのため、半導体を必要とするパソコン・スマートフォン・ゲーム機への需要が急速的に増えたため、半導体の不足が世界的に深刻な状況となっています。
半導体メーカー側も対応は進めていますが、加工費・材料費が高騰しており半導体の納品価格を値上げせざる得ない状況です。自動車メーカーだけでなく、半導体を必要とする会社に値上げを要求をしています。
見送った理由③半導体不足で減産が長期化する可能性がある
半導体不足は、値上げだけでなく、スマートフォンに買い負けしている影響もあります。その理由として、スマートフォンなど通信機器に使う半導体に比べ、安全性の面から要求も多い車載の半導体は要求が多い割に、発注数が少ないことがあげられます。
スズキだけでなく各自動車メーカーは、スマートフォンに買い負けしたことで、安定した部品調達が出来ずに生産がストップしてしまう状況に陥っています。そこで、半導体の値上げを受け入れて生産量を維持するか、減産するかの判断を迫られています。
見送った理由④環境対応車(グリーンカ―)の開発・販売の急務
自動車業界では、各国の二酸化炭素の規制が厳しくなる点から、EV車やHV車などの環境対応車(グリーンカー)の開発に余念がありません。
そんな中、スズキは2020年にグリーンカ―を数年以内にインドで100万台販売する目標を掲げています。グリーンカーの技術開発のための人材確保や開発のための資金の調達が必要としていることが考えられます。
見送った理由⑤グループ各社の業績に格差がある
スズキの関連会社の業績は各社ごとに大きな開きがありました。そこで、グループ全体で統一した要求を行うよりも、各社の労働組合で交渉を行っていく方が適切であると判断したからです。
統一要求を見送ったが各社対応で交渉はしていく
スズキ労連全体での統一した要求は見送られたものの、各会社レベルで交渉していく流れです。内容としては、生産向上における改善や持続的な企業成長を目指していくためにも、継続的な人への投資に向けての交渉をすすめています。3月頃に最終的な回答が発表されるので引き続き注目していきましょう。